敷地を読む

建築設計の仕事で使う「敷地を読む」という言葉がある。

「敷地を読んで」考えることはごくごく自然のことで、建物の設計のヒントにたどり着く思考の一部になっている。しかし、世の中に建つ建物のすべてが「敷地を読んで」建てたものとは限らない。

例えば、前面道路に対してリビングが面して中が丸見え、いつもシャッター閉めっぱなし。風通しが悪く、ジメジメしてカビの匂いがする建物。かっこよく大きな開口部を開けたものの、眩しすぎてカーテン閉めっぱなしなんてのも。(もちろんすべてを否定するわけではないが)斬新なデザインや色彩で周囲を圧倒するような建物。周辺環境に関係なくモデルハウスがそのまま建ったような住宅街。外構が何もなされず周囲から孤立したようにポツンと建つ建物。挙げればきりがない(笑

これらの建物を見て同じ仕事をしていると思いたくないものだ。住宅に代表されるが、巨大広告やCMで集客し箱を量産して押し売るやり方や、建築家のエゴにクライアントが大金を払って住まうことも好きではない。当たり前のことだと思っていたが、世の中はできていない建物で溢れている。

 

では、「敷地を読む」とはなになのか。

この「読む」とは「解読する・推測する」に近い。「敷地を読む」とは、”周辺環境や町並み・地形を読むことと、光や風・音、視線や眺望など敷地の持つ特色を読むこと、そして法的な規制や情報を読むことの大きく3つ、それらの性質を理解し分析すること”だと思う。

敷地ひとつひとつに個性があり、季節や時間によっても移ろいを感じることができる。敷地視察の際は、できるだけ多くの時間を使って周辺地域を歩き、写真を撮り、いろいろな角度から敷地を見ることにしている。場合によっては幾度と通うことになり、建物を描き始める前に自分の五感で実感することが大切にしている。気持ちのいい建築は、この「敷地を読む」時点で気持ちいいことに気づく。

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思えば、環境という名前のつく学科にいた大学時代、設計課題では、敷地環境を考えるエスキスから始めることを繰り返しやらされた。設計事務所へ入ってもそれは同じで、所長と周辺環境を分析し考察するまでが重要で刺激的な時間であったように思う。独立してからも、最も大事にしている時間だ。

クライアントの要望は、時にきまぐれで、無茶なものも多い。しかし、敷地には、要望を叶えるためのアイデアや建物の設計コンセプトを引き出すためのヒントがたくさんある。万が一、建物の設計で迷い、納得がいかないものであった場合は、ここにいつだって戻ってくることができる。「敷地を読み」さえできていれば、大きく踏み外すことはない。

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ここまでくると、”読み甲斐”のある敷地に出会いたいと思う。綺麗に区画化され、同じ大きさ、デザインの建物が立ち並ぶ敷地は、周辺環境に変化がなく読み取れる情報が少ない。変形した土地や傾斜地、日当たりの悪い土地、狭小地もその土地の特色。きちんと「敷地を読み」さえすれば、その敷地だからこそできる建物を見つけることができる。使いにくく、敬遠されがちなものほど、きちんと建てればより愛着の持てるひとつだけの建物を獲得することができるものだ。もちろん、変形敷地や狭小地は平均的な土地に比べて格安であることは言うまでもない。

というわけでこんな感じで考えていることを整理してジャーナル書いていこうと思います。
よろしくです。