photo by Itsuko Shimizu
昨年から工事をすすめている「鍛冶屋のいえ」。海南船尾に拠点をおく鍛冶屋さんHOUSEHOLD INDUSTRYの武田氏の住まいである。ほぼ、工事は完了し、あとは武田氏による家族のための道具(机や把手)の制作を残すのみ。また完成し次第、竣工写真を撮らせてもらおうと思っている。
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THE OFFICE|instagram|鍛冶屋のいえ
今回は、7月5日からnormにてはじまる初の個展のDMのための撮影である。撮影は、かねてから武田氏の作品を撮り続けている清水いつ子さんに依頼。武田氏に展示のコンセプトを聞いた。彼は新しい住まいの話をたくさん話してくれた。家のこと、子供のこと、そして作品のこと。そんな住まいでの経験をもとに今回の作品のインスピレーションを受けたとのこと。
その中で印象的だったのは、早朝起きてから、部屋に光がさしてくる時間帯。この間にいろんなアイデアや考えの整理ができるという。わたしたちの想像を超えて、家が持ち主とともに歩みを進めているのを知った。
撮影の開始を深夜3時と決めた。日の出前のごく数分に起こる、光が青くなる時間。この体験は、立ち会ったものすべてにとって忘れられない時間だったと思う。静寂の中でシャッター音だけが聞こえる。小鳥のさえずりや車の音が聞こえはじめ、ぼんやりと部屋の中が明るくなるのを見届けた。気づけば朝6時になっていた。
彼の体験を聞いて、DMに言葉を添えた。
会の盛況を祈ります。
鍛冶屋の朝は早い。
あたりは暗く、家族が眠るなか、目が醒める。
青い光。
窓から部屋に射す、青い光。
土間に伸びる。
欄間で切りとられた梁を見上げる。
ぼんやりと思考をめぐらせる
青いせかいのなかに。
昭和中期に建てられた、名もない小さな家。
庭には名も知らなかった草木たちが、次から次へと花を咲かせ、
時折 鳥が木ノ実を啄む姿を見せてくれる。
光のいろがかわる
青から、白へ。
窓の前に座り、浮かぶものを描き留める。
鳥のさえずりが聞こえたか。
こどもたちが起きてきた。
隣に並んで、お絵描きをはじめる。
窓の外は明るく、
影がようやく生まれた。
word by Homare Kashihara