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好評だったハチミツ21「突撃!隣の机まわり!(5種のサラダと3種のお肉付き)」から早4年。単独で2時間やって欲しいという要望から、待望のスピンオフ企画が実現した。今回は建築設計事務所編。

前回も登壇して会場の笑いを独り占めした共同運営の東端くん(ばたやん)がその筋に強いと言われる「仕事場のあれこれ」。仕事場訪問オタク。スタジオフェチ。とも言うべきか笑

ともにガジェット、文具好きが高じて、有名人の自宅はもちろん、某有名漫画家のスタジオ、有名設計事務所の仕事場、持ち物・ツールなどのテレビ・雑誌の特集があれば、「ばたやん、あれ見た?」と情報交換。憧れの人がどんな家に住んでいて、車は何に乗っているのか、かばんに何が入っているのか。夢みる少年のような気持ちでそれらに見入ってしまうのは、今も昔も変わらない。

casa_brutus

企画のきっかけは、Casa BRUTUS特別編集号「デザインのいい仕事場2.5」。AmazonやSnow Peak、BEAMSなど国内外のオフィス事情だけでなく、NIGOがデザインした新アトリエが公開されていて、サブカル好きとしては大興奮。もちろん、ばたやんとも話をして、「ばたやん、ひさしぶりに例のやつやるか!」「そろそろ自分たちも仕事環境を本気で見つめ直さないといけないよ!」という感じで企画化に至った。

簡単に言うと、気になる人のデスクの上とかばんの中だけで、ばたやんが専門家風に独りしゃべり2時間という企画。ふざけているように見えますが、ハチミツ32のホームセンター特集に続いて神企画になる予感がぷんぷん。

というわけでひさしぶりにレポート書きまーす!

ハチミツ56_アンケート

事前に上のようなアンケートをさせてもらった。対象は設計事務所の代表11名と他業種の方2名。弊社も参加。みなさん、各方面で活躍されている尊敬する方ばかり。場所は和歌山から東京まで、社員20名クラスの設計事務所から一人でされてる方まで幅広くご参加いただきました。アンケート内容はイベント内のみの公開ということなので詳しくは書けないが、すんごいメンツ。ハチミツでお世話になった方々と知り合いの方まで。ご協力ありがとうございました。

代表的な質問項目は、こんな感じ。

パソコン周りのこだわりは?
データの管理、共有方法は?
机まわりのこだわりは?
仕事場の椅子はなに?
仕事中のBGMはあり?イヤホンは?
ごはんはどうしてる?
最後に仕事場とかばんの中身を見せてください。

率直に僕らがいま気になる内容ばかりを質問してみた。デスクの写真見ながらの面白いばたやんの喋りは、イベント当日のみとして、アンケートの集計をしてみた。あくまで参考として見て欲しい。

 

まずは13人に使用しているパソコンのOSから聞いてみた。

PC2

デザイン業界の中でもWindowsが優勢

設計事務所もデザイン業界だと考えるとMacのイメージが強いが、60%がWindowsを使用。デスクトップとラップトップ(ノートパソコン)の割合はほぼ同数。Macのみの人は全体の23%程度と少なく、Winだけは46%。両方使っている人は31%で、その場合もWinをメイン機として使っている人が多い。一番多いのがWinの据え置き型デスクトップ。複数台持つ人に多く選ばれている。持ち歩くことができないが、性能面・安定性で選ばれているのだろう。結局のところ、その人それぞれの使いやすさで選んでいるように見え、期待していた大きな傾向は見られなかった。

現場用タブレットとデュアルディスプレイ化が主流

また、PC以外でiPadなどのタブレットを使用している人が半分程度あった。Apple Pencilなどのタッチペンを使用して、現場で撮影から編集・書き込み・保存・メール送信まですべてを完結できる。出始めた数年前より格段に使いやすくなったこともあり、サブ機としてのタブレット導入が本格化している。

またノートパソコンに限らず、PCにモニターを繋げてデュアルディスプレイ化している人が58%いた。CADで図面を描くときに複数画面があると、図面や写真を広げながら描くということができる。まるで大きな机の上のように。PC画面だけでなく、モニターも大きくしていく傾向があるようだ。しかし、事務所によっては、机の上から物をなくしたいということで、モニターなんかいらない。とのこと。っ面白い!

1.事務所の雰囲気2

2.デスク周り2

うちの事務所の今はこんな感じ。
3人ともモニターに繋げている。おおはしぐみのふたりはノートパソコンを主とし、帰宅時にPCは持って帰る。僕は、メインでiMac2台使用(OSとアプリの互換性のため)。1台をモニターに接続。現場用にタブレット使用。マウスはロジクールの多機能マウスは外せない。ごちゃごちゃしているが、L字にすることで手の届く範囲にできる限り配置している。

 

続いて、CADソフト問題。
これは設計事務所でずっと議論されてきた問題である。最近では3DCADも含めて混沌としてきており、BIMと呼ばれる3D建築モデルだけでなく、材料単価・施工手順などの情報も付加できるCADソフトもある。一方で現在でも手書きで図面を描く事務所もあり、設計事務所によって様々なツールを駆使し、各自の表現方法を模索している。

CAD

やはりベクターワークスとJWの2強

設計事務所11社の中での結果、Vectorworksが46%、JW CADが33%と多くを占める。いくつかのソフトを状況で使いわける事務所も多い。Vectorworksは高価だが、学生時代に廉価版を使っていてそのまま使い続けることになった人が多いように思う。JWは無償ダウンロードできるが、Win専用(Macでも入れることは可)。他ソフトへの互換性は悪いが、現場の方はほとんどJWなので図面をそのまま受け渡しできるように、JWをパソコンに入れておくのは必須なのかもしれない。

選択できる多様な時代になってきたが、多くの事務所がこれといったベストなソフトを選べないでいるように見えた。できればコストをかけずに全員がJWにすれば全てうまくいきそうなものなのだが、難しいのは、CADソフトは簡単に移行できないということ。使い方がぞれぞれ違うので慣れるのに相当な時間を要する。移行しようと思っても結局慣れたソフトでつい進めてしまう。というわけで、CADソフト問題はこれからも追跡を続けよう。

そんな中、図面はCADで描くが、ドラフターと呼ばれる平行定規のある製図板を使いながら詳細な納まりの検討をしている事務所が印象的だった。

 

続いて、データの保存・共有方法について。

図面や現場写真、メールでのやりとりなど、パソコンで仕事している事務所がほとんどな中、データをどう保管するかは最重要課題である。また、スタッフ間でのデータ交換・共有はどうしているのか、みなさんに聞いてみた。

DATA

外付けHD必須。NAS化。クラウド保存はDropbox。

データの保存は外付けHDに定期的にバックアップ。クラウドでのデータ保存・共有は、13社中10社が何かしらのサービスを使用。それ以外は、複数名いる事務所の場合NASを導入し、外部からアクセスできるようにしている。クラウドサービスは、Dropbox一択だった。同じようなサービスは他にもあるが、おそらくサービス開始時期が早かったDropboxを使い続けているのだと考えられる。

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photo by fabricscape

続いて、机まわりのこだわりについて。

それぞれ文房具へのこだわりが強い。赤いペンを使う。ボールペンの書き心地にこだわる。色鉛筆を常に常備する。ドラパスのカラー三角スケールはペンケースの中ですぐに見つけられる。三角スケールは縮小コピー用も常備し、新しいとナメられる。マウスとマウスパットは高級品を買う。机まわりは置く場所をいつも決めているなど。また、先に述べたように机の上はむしろ減らしたい、何も置きたくない、という強者もいた。

PCの机を昇降式にして、立ちながら仕事できるようにしている事務所がいくつかあった。意外と集中できて、気分の切り替えと健康のためという。目からうろこ。面白い。

 

机まわりと言えば、椅子のこと。
建築家が仕事や打ち合わせにどんな椅子を選んでいるか、気になるところ。

chair

仕事の椅子はアーロンチェアがベスト

69%がなにかしらのこだわりをもってチェアを選んでいた。その中でも多かったのは、ハーマンミラー社のアーロンチェア。長時間座っても疲れない機能性と、長年つかってもビクともしない耐久性。さすがといったところ。他には、ケビチェア、フィジックスチェアなど渋い選択の事務所や以外にもKOKUYOの肘つき事務用回転椅子が名作椅子と同等に扱われていたり。打ち合わせスペースでは、アントチェア・セブンチェア、CH24など、北欧デザインの椅子が多かった。椅子が欲しくなった!

 

続いて、仕事場の音環境について。
仕事する環境として、BGMとしての音を許容するかどうか。個人的にはすごく興味があったので質問に入れてみた。

BGM

BGMの有無は事務所の思想を示す

BGMありか、なしか、ほぼ真っ二つ。BGMあり派は、ラジオが86%とほとんど。また、全体でイヤホン使用NGが24%だった。とくにBGMなし派は、イヤホンを明確に禁止しているというところが多く、事務所、もしくは所長の考え方・スタンスがはっきりしていた。

 

3.カバンの中身2

最後に、13人のかばんの中を見せてもらった。
共通して多かったのは、iPad、電卓、デジカメ、身だしなみグッズと仕事道具であるメジャーや電子距離計など。建築家のかばんの中は黒系が多く、差し色で赤や青など入れてお洒落する人も。持ち物にはオリジナルのステッカーを貼ったり、カスタマイズするのも建築家ならでは。やはり面白い。

 

こんな感じで仕事環境は多種多様である。当たり前だけどどこをとってもみんな一緒ではない。あの人のあの作品もここから生まれるのかと思うと感慨深い。手書きの時代ではなくなったが、それでも十分個性的だ。作品の雰囲気の通りの人もいれば、意外な人もいて違う側面を見たような気がした。

人のデスクを見て、我がデスク見直そう

「人の振り見て、我が振り直せ」と言うが、一番自分たちが省みることができたのではないか。と思う。みなさんもそのように思ってくれていたとしたら嬉しい。意外と横のつながりはあっても情報交換しないもの。同業なので他の事務所にはほとんど行く機会がない。そんな今まで表にでなかったものから、共通項を見出したりや時代の変化を感じ、建築家の思想を覗くことができた。観覧してくれた人から、「ほかの職業の人や職人さんの特集をして欲しい!」と要望をもらった。確かにシリーズ化できる企画なので、続編を考えようと思う。やはり神企画となった。ばたやんもお疲れ様です。

ではみなさんも、机まわりを見直して、日々の仕事をより快適に。