和歌山県和歌山市にあるビルの1フロアの住まいのフルリノベーションである。

和歌山城が一望でき、近隣の公園の緑地、そして道路に沿って抜けるような広がりある眺望をもつ屋上付き4階建てのビルの最上階が敷地。従来より住まいとして使っていたフロアだが、設備の老朽化に伴い改修するはこびとなった。

1人ないしは2人で住むには十分な広さをもつフロアに、約3.8mある天井高。これらの既存躯体を活かしながら、屋上に出られる階段を設置することが今回のテーマであった。

そこで提案したのが、フロアの南北に半屋外的な土間を設けて光だまりをつくり、生活空間とはスチールサッシで軽やかに分節すること 。さらに天井高を活かし、ロフトを設けて収納量を確保するとともに、空間に変化を与える構成とした。

既存の大開口をもつ南側には、開口に沿って横長の土間を設けた。趣味の園芸を楽しみ、ペットルームとしてのスペースでもある。 また、リビングやダイニングといったプライベートな空間を、カーテンがなくとも気兼ねなく過ごせるよう大通りの視線から距離を置く意味合いもある。

北側の土間には屋上へと続く螺旋階段と既存躯体あらわしの吹抜けを設けた。こちらは縦に延びる土間であり、ユーティリティー、屋上へと続く家事動線でもある。

南北の土間のあいだの生活空間には、木軸でロフトスペースをつくることで空間にレイヤーが生まれた。コンクリートと木が対比した、生活感のある空間となった。

引き渡し後再訪すると、映画好きのクライアントがホームシアターを見せてくれた。広い壁面にプロジェクターから投影されるアクション映画。改修に伴いスピーカーも新調し、音響計画を色々試しているそうで、さながら映画館のようであった。この住まいが、料理、映画、アウトドアと多趣味な日々をより豊かにさせるものであってほしいと考えている。