大阪市東淀川区淡路での木造2階建ての三軒長屋を、ゲストハウスとカフェへとリノベーションするプロジェクトである。

敷地は阪急淡路駅から近く、駅前商店街の人通りも多く活気にあふれたエリアに位置する。依頼主は昭和3年から続く銭湯である昭和湯のオーナーで、これまでにも地域の街づくりにおいて中心的な役割を担ってきた。昭和湯に近く馴染みのあった長屋が空き家となったことを機に、大阪市街の中心部や京都への良好なアクセスを活かした、地域にあたらしい交流を生み出すための場所づくりとしてスタートした。

限られた工期と予算の中で、要求された機能と法的な条件を成立させるために、構造体の補強や大工工事、設備の整備のみを工務店の請負工事とし、解体から仕上げの工程にいたるまでを施主自ら協力者を募ってセルフビルドで工事を進めた。

三軒長屋のうち二軒連なる住居をゲストハウスに、元飲食店の長屋をカフェへと改修する計画とした。それらは構造体を共有しているものの、それぞれが改修を重ねてきた結果、三軒とも異なった様相となってしまっていた。そこでゲストハウスとなる2階は既存の天井を解体し、長屋の特徴でもある連続した架構と大屋根でおおらかに包まれた構成とすることで、一つのまとまりのある空間をつくりだした。最も劣化の著しい中央の住居は、ゲストハウスの顔となるよう既存の外壁を撤去して軒下をつくり、構造の補強を加えつつ建築当時の構造体や土壁を現した仕上げとした。

内装の仕上げからコンクリートの土間の施工、ファサードの木製ルーバー、受付カウンターやベッドの製作まで、工事の段階からたくさんの人に支えられながら施主自らセルフビルドで作り上げた。現在も昭和湯と共に、趣向を凝らしたイベントで盛り上げながら成長を続けている。これからも地域の人々や遠方より訪れた旅行者にも長く親しまれる場所となることを期待している。

木雲ゲストハウス
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