紀の川市に建てられた木造3階建の住まいである。

敷地は、大阪と和歌山の県境に走る和泉山脈と紀ノ川のあいだ、少し山側に上がったなだらかな緩斜面地に位置する。周辺は田畑が多く、住宅はぽつりぽつりと建っているような静かな環境である。

思い返せばはじめてプレゼンテーションしたのが2015年8月。そこから約3年の月日をかけてようやく出来上がった。友人でもあるクライアントの要望は紀の川市の平野や周辺の山々が見えるリビングとお風呂だった。デザインに対する思いが強く、インテリアや照明、家具もこだわって選定した。毎度楽しい打ち合わせだったのであっという間だったように思う。

テーマは求められたデザイン要素をクリアするとともに、コンセプトとプランニングを明快にすること。そして、それらをファサードに表出させ、整然と整えることであった。

平面計画は、まず1,820mmや2,730mmをグリッドとして、縦長の長方形の矩形を西と東に分割した。西日対策として、西側には上下につながる階段室、LD・サニタリーなどのパブリックな用途を配置し、整然とリズムよく並べられた開口部でファサードを構成した。対して、東側にはキッチンや寝室、バスルームなどプライバシーを要する諸室を配した。

断面計画では、1階をインナーガレージとゲストルームとし、2階にリビングと奥様の書斎、キッチン・パントリーとし、家事動線をまとめた。3階には、個室と水廻りとし、開放的な西面にサニタリーと外部テラスを配置した。リビングは天井高さ2.7mを確保し、コンパクトに3階まで昇降できる螺旋階段を採用することで、開放的にヴォイド(吹抜け)から採光を確保できる計画とした。

植栽工事は上富田の庭工房さんにお願いした。やりたいことがたくさんあるクライアントなのでこれからの庭の成長が楽しみである。

写真は住み始めて1年半経過した状態で撮影させてもらった。子供も産まれて賑やかになり、どこにいても光が感じられる本当に気持ちのいい空間になっていた。子供がこの家とともに成長することを考えると嬉しくなった。