大阪府の南部に位置する泉佐野市羽倉崎にあるカフェのリノベーションである。
世界につながる関西国際空港のふもとにある泉佐野市。築46年の元ガラス店の倉庫兼住居を改修して女性専用のエステサロンを経営されていたが、イベントスペースとして利用していた元倉庫部分をカフェとしてリノベーションすることになった。周辺にはゆっくり過ごせるカフェが少なく、イベントをすると即完売するなど潜在的な要望の高いエリアのようで、満を持してのプロジェクトとなった。
はじめに伺ったときに驚いたのは、アンティーク家具好きなオーナーが個人的に集めていた椅子やベンチ、照明の数々。それらが雑然と置かれた倉庫は、元ガラス屋ということもあって天井が高く、黒く着色された空間はそれだけでかっこよかった。
美を追求するエステサロンと身体に優しいメニューを提供するカフェは相性がいい。しかし、カフェとしてオープンするにあたり、エステに興味がある女性だけでなくいろいろな年齢層のお客様にきてもらいたいということで、少しイメージを整理する必要があった。また、カフェ奥の入り口から出入りれるサロンのお客様のプライバシーを守ることを求められた。
まず、高い天井への意識をもう少し前へむけさせるために、既存ロフトの高さで上下に分節し、下を白く塗装した。サロン客の動線を区切るため、サロン入口に目隠しの壁を施し、トイレと小さな手洗い場のボリュームを兼ねた。壁はゆるやかな曲線で仕上げて女性的な柔らかさを表現した。また、同じ高さまで天井から木組みを吊り下げることで、天井に見えない幕のようなものができ、より水平方向を強調させることができた。
白いカウンターは、魅(見)せる厨房をコンセプトに、左官仕上げとし手に馴染むようにゆるやかな曲線で仕上げた。無数の小さな溝やクラックを含む土の表面は、オイルや布で何度も拭き磨かれることで美しくなる。歳が経つほど美しくなる、強い女性をイメージした。
元あった鋼製建具の入り口はビンテージの木製建具に変え、倉庫のときに使っていた模様入りガラス窓はそのままに、余っていた木製ガラス建具を看板に変容させた。
古いものと新しいもの。なにごとも変化していくもの。ストーリーが感じられるプロジェクトにしたかった。これからの変化を楽しみながら、愛でていってもらえると嬉しい。