3月にnormにて行われた、写真家・伊東俊介氏による、いとう写真館の展示「もくじ」のアートワークである。

約1年ぶりの今回の展示のコンセプトは「もくじ」だと聞いた。人の歩み、家族の歴史、積み重ねた時間。写真は記憶の一頁を記す目次。一枚の写真でその頃の出来事を思い出す。展示は、伊東さんが毎年撮り続けている姉妹を時系列順に空間に並べるという。

それを聞いて、本を読み始めるときに、目次を見てわくわくする感覚を思い出した。人の人生が一冊の本だとしたら、その節目でおこる小さな変化や物語が少しだけ「もくじ」に現れる、それが面白いのだと思った。

写真のことを考えた。

デジタルの時代になり、便利になる一方、写真を顧みることは減ってしまった。写真は残していくものではなく、消費されるものになってしまった。スマホとSNSの普及により、新しいもの、今の瞬間を切り取ることにのみ価値を見てしまう時代だ。伊東さんの活動は、そうではない普遍的な価値観を示してくれるものだ。

伊東さんの写真を見れば、過去に戻ることができて、今を顧みることができる。そして自分の少し未来を想像する。自分の人生にはたくさんの節目があったが、ひとつづきであったことを気づかせてくれる。そこには、たくさんの物語とともに、肌触りがあり、匂いがあり、実感を伴う。

伊東さんが撮り続けている姉妹の2枚の写真を使用し、物語の中の1シーンのように、折れば本のようになる装丁を心がけた。本文には伊東さんから頂いた言葉を添えた。

いとう写真館
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