2018年5月26日、27日に開催されたnormの1周年企画のためのアートワークである。
西本ビル1階に明かりが灯ってから早1年が経った。今までオーナー坂上氏が魅力を感じた作家を招き、月に1度のペースで個展が開催されてきたが、企画展は初めてのこと。今回は自らテーマを提示した展示となった。提示されたテーマは2つ。
1つは〈時間〉だった。これまで展示をしてくれた2名の作家のコラボレーション企画と、アーティストを加えたインスタレーション。蝋燭作家であり、日々絵を描き続けている河合悠氏と、植物を使い作品を制作する西別府久幸氏。河合氏は2日間の間に絵を描き続け、また西別府氏はその場でブーケやスワッグを制作するという。2日目の夜に、にしもとひろこ氏を迎え、筆運びの音や、木や葉の擦れる音に声のパフォーマンスを乗せるというものであった。ともに絶えず変化し、最後には無くなってしまうというものばかり。すべてはこの2日間のために即興で生まれ、そして消えていく。作家自身もどうなるか予想できない、その場にいた者だけが体験を共有できる特別な空間の提示である。
もう一つは〈感謝〉。normを支えてくれるお客様、そして作家のみなさんに感謝の気持ちとして企画したとオーナーが教えてくれた。相談を受けたとき、なんてオーナーらしい2つのテーマだと思った。
そこでペーパーアイテムは、DMを手にしたひとりひとりに感謝の気持ちが伝わるように〈手紙〉をテーマにデザインに取り組んだ。そんな繊細なの気持ちを届けばと、裏面が透過するような薄紙を採用。表と裏では手触りが違い、繊細で、丁寧に扱いたくなるようなものを選んだ。メインビジュアルは1年前のまだ什器もなにもなかった頃のnormで、ただ壁があり、窓があり、そこに光が差し込まれる空間。原点を振り返るとともに、オーナーが大切にしている指標のひとつである〈人の手を感じられる〉ようなデザインを目指し、イラストで再現した。窓の部分からは裏面の文字が透け、表と裏のイメージが一体になるように考えた。顧客へ送る手紙と、作家へ送る招待状も作成し、オーナーが一枚一枚手書きで一言を添え、送付された。
今回のDMが完成した後、ふと、「オーナーらしいカタチのものができたなぁ」と思った。意識していた訳ではなかったが、1年前に制作させて頂いたオープン案内のDMとは全く違うものが出来上がった。normはオープン当初から少しづつ変化している。展示や、扱う商品の変化。きっとそれはオーナーの人柄がにじみ出ていることに他ならないのだと思う。次の1年、その先の10年と、どんな変化が待っているのか楽しみだ。