和歌山県岩出市根来に建てられた軽量鉄骨2階建てのオフィスの計画である。

敷地は北側に和泉山脈を望む緑豊かな環境にある。県内外に3ヶ所ある事業所を統合することと、職場環境を改善することで社員同士のコミュニケーションや仕事に対するスタンスの向上を図ることが目的で計画された。新たなオフィスを計画するにあたって、周辺環境を活かしながら開放的で心地の良い職場環境をつくり、また街に開かれたオフィス空間となるように心がけた。30人程度が働く事務所空間と150㎡程度の倉庫に加えて、スタッフの休憩やミーティングに利用するラウンジの計画を加えた。また、ラウンジは催事でイベント利用したり、災害時の避難所として開放できるようにも計画されている。

プロジェクトを限られた予算・工期の中で実現するために、主要な骨格となる躯体や外装にプレファブメーカーの軽量鉄骨による規格システムを採用し、内装設計においては素材の選定や作り方にこだわることで、全体としてグラデーションを持たせることで質の高いオフィス環境を獲得することを試みた。

執務室や倉庫は標準的な仕上げ材料とした一方で、ラウンジはフローリング等の仕上げ材から外部の開口にいたるまで随所に木質の素材を使用した。2階エントランスからラウンジへと連続する米松材の架構は、開口部からの光を受けて室内に陰影を作り出すとともに、木質空間の天井を支持する役割を果たしている。ラウンジは北側を全面開口とすることで山並みの景観と柔らかな光を取り込み、木の質感と相まって開放的で心地よい空間となった。ラウンジ内に設けたオープンキッチンはスタッフの休憩時間の環境を整えるとともに、ショールームや料理教室としての活用することで新しい顧客との接点として計画している。

ガスや電気といった生活のインフラは、私たちの身の回りにあることが当然のように感じてしまうが、それを支える人に向き合うと、絶え間ない営みによってもたらされていることに気づかされる。この場所でスタッフが活き活きと働く様子がまちに滲み出すことで、人々にとってより身近な存在となり、これから社会を支え続ける会社として地域に永く大切にされることを願う。