大阪市福島区で住居兼下宿として使用されていた長屋をゲストハウスにリノベーションするプロジェクトである。

依頼主は、淡路のゲストハウスのワークショップに参加いただいたご夫婦であった。二人は旅先で出会い、それぞれ海外での勤務を経て、日本への移住を機にこの場所でホステルを開業することになった。20床の宿泊機能の確保と、ゲストや近隣の人が利用できる小さなキッチンを備えたサロンのある空間が求められた。

敷地のある野田地域は、大阪駅に近くて観光客を誘致しやすく、大きなビルも建つ中、活気のある小さな商店や住宅も並ぶエリアである。細長い敷地に建つ既存の建物は、周辺に高い建物に囲まれながら2棟の木造建築が奥行き方向に連結された構成で建っている。手前側の建物は1階を貸テナント、2階は下宿として賃借し、1階貸テナント横の路地のような細長い土間を通り、奥側の建物は家主の住居として使用されていた。その住居に併設した奥行き1.6m程の小さな屋外スペースは、三方を建物に囲まれながらも、やさしい光を落としていた。

この空間構成を魅力的に活かすため、小さな屋外スペース(箱庭)と建物の境界を一つの大きな開口部として再定義し、路地のような空間、人が集まるサロン、光を取り込む箱庭、これをひとつのシークエンスとし、小さくても広がりのある豊かな場所となるよう計画した。

玄関にあった狭小の階段は撤去し、路地と奥に配置した箱庭の緑へと視線を通しつつ、吹抜けを介して2階の宿泊エリアとの視覚的なつながりを残し期待感を演出した。2階の宿泊室は既存部分の解体は最小限にとどめ、ベッドの製作や壁の塗装など可能な部分はセルフビルドで行うことで、コストを抑えながら建物が持っていた下宿としての気配を活かした空間づくりを心がけた。

気さくで柔らかな雰囲気をもつオーナーの人柄と相まって、静かで心地よい空間となった。様々な地域から集う旅人にとって、良き出会いのある場所になることを願っている。

OSAKA HOSTEL KAI
www.osakahostelkai.com