登録有形文化財である旧西本組本社ビルの2階に引き続き、1階のセレクトショップ「norm(ノルム)」のためのリノベーションである。ビンテージの北欧家具や国内外の作家の雑貨、小物など集められた素敵なセレクトショップである。不定期にて作家を招いた展示も開催するということで、幅広い商品を引き立てる空間を必要とされた。
旧西本組本社ビルは、大正後期に建てられたとされ、1945年の和歌山大空襲の戦火を逃れ、建設会社の事務所から設計事務所、雑貨店、飲食店と度重なる改装を行ってきた。建物の老朽化は心配されるところもあるが、これまでに和歌山において建築だけでなく、ものづくりの発信、人々の集いの場として文化的価値を保有してきた。そんな中、建物の玄関でもある1階を改修するに当たり、これまでの変遷をありのまま空間に表出させることを試みた。
壁は、既存のしっくい壁を剥ぎ落とし、過去の改装により塗り重ねられたすべての層を表出させた。床は、既存の板張りを剥がし、最下層の土間コンクリートを表出させ、一部のみフローリング張りとし、コンクリートのクラックや凹凸を残した極薄のモルタル仕上げとした。建具枠と天井は、以前塗られていたブルーグレーとベージュ色を再現した。新規に入れる建具は、昔の写真から元デザインを踏襲し、無垢の木で製作した。
三方向にある背の高い上げ下げ窓から差し込む光は、時間とともに空間に違う表情を見せてくれる。剥ぎ落とされた壁やクラックは、自然の造形物のようにものやひとを包容する。歴史の重みや、空間の力を再認識する象徴的な空間に仕上がった。旧西本組本社ビルの新たな時代の門出に、この仕事に関われたことに感謝している。また、さまざまな作家が集い、ものづくりの発信の場として機能することを期待している。
norm
www.norm-s.jp